(財)日本LL教育センター発行:「チャビータイムズ2001年5月号」より抜粋
21世紀の児童英語教育
子どもたちの英語教育が不安な皆さん、素朴な疑問にお答えします。
大正大学文学部講師 松崎 博
『子どもには英語力を身につけてほしい。学校英語教育だけでは心もとない。』
なるほど、学校英語に期待できるのは基礎教育だけ。口語であれ文語であれ基礎は大切だけれど、親の全ての期待・要求にはとうてい応えられません。語学は時間くい虫です。どうしても学校外教育(after school education)が不可欠となり英語教室の門を叩く。学校外教育は家庭教育も含みますから、親御さんには英語を耳に親しませる環境を工夫するようお願いしています。母語の習得プロセスは何語であれ、聴く→話す→読む→書く、なのです。listeningは家屋の建築で言えば基礎部分。ここがしっかり出来ていないと家が崩壊してしまいます。たくさん英語を聞かせるとご褒美にその英語が音感として残り、発音が素晴らしくなります。この点においては専門家にほぼ異論はありません。
『家では英語を使う機会がなく、本当に英語力がついているのか不安です。幼児期に英語を学んだ子どもとそうでない子どもは、中学や高校に行ったときに英語力に差がでるのでしょうか。』
週1回の50分授業を2年間やっても実質100時間を越えません。厳しい言い方をすれば多くを期待できる時間数ではありません。でも100時間なりの英語力はついているべき。その英語力の測定は体の定期検診と同じように(財)日本英語検定協会の児童英語検定試験などで客観的に計ってみるべきです。測定もせずに心配するのは意味がありません。測定の結果が出たら先生からアドバイスを得て下さい。そのアドバイスをどう生かしてお子さんの学習意欲を高めてゆくか。ここが親の腕の見せ所です。他の生徒の点数と比較してお子さんに怒りをぶつける!?お子さんを英語嫌いにする最も効果的な方法です。幼児期に英語を学び始め、高校生になっても継続して学び続けている学生と、中学から学び始めた学生の英語力に関するJASTEC(日本児童英語教育学会)の調査結果では、中学1年では差が大きく、2、3年で差はほぼ無くなり、高校で再び差が開くと報告されております。やっぱり児童英語学習者はあとでニンマリするのです。
(日進駅前教室・水野の感想)
LL教室の生徒は、確かに英語が“得意”な生徒が多いですが、「中学1年では差が大きく、2、3年で差はほぼ無くなり、高校で再び差が開く」という理由は、以下のことが考えられます。つまり、「中学での英語の力の判定基準が音声によるcommunication能力ではなく、伝統的な文法教育に傾いているために、音声教育を受けてきた児童英語経験者の能力を評価しきれていないことに原因」(松崎先生・チャビータイムズ2001年6月号より)があります。だからといって、「試験勉強」だけで終わってしまっては、小学生時代から養ってきている「ことば」としての英語力をさらに伸ばすことはできません。しかし、小学生・中学生時代を通して養ってきている良い意味での英語の「勘」は、上級レベルになると、非常に役に立ってきます。そのために、「高校生になってから再び差が開く」のだと思います。当然、大人になってからも役に立ちます。(但し、いくら小学生時代から養ってきた「貴重な財産」があるとはいえ、努力を怠れば、当然、伸びる力も伸びなくなります。)
『子どもはあまり英語に対する興味はないようで、何とか英語に興味を持たせて、英語教室に通わせるようにしたいと思うのですか。どうしたらいいですか。』
子どもたちは学用品、雑誌、TV、ゲーム、音楽などを通して無意識の内に英語に接触しています。とても興味を持っているんです。よく「私が英語が苦手だったものですから、子どもたちにはせめて英語くらい…」と親御さんの相談を受けますが、親の苦手意識って伝染するようです。実は、私も妻も言語に対する関心が強い反面、数学的な世界が大の苦手なのです。伝染すると困ると思い子供たちには極秘にしておいたのですが伝染してしまいました。松崎家はどうも非数学的な学習環境が整備されているようです。対応策ですか?あります。伝染が原因なら、英語好きにお子さんを預け、その人の英語好きを伝染させちゃうのです。じゃnative speakerがいい!と早合点しないで下さい。native speakerが英語好きとは限りません。英語好きじゃないと駄目なのです。英語を教えるのが好きで、上手で、英語が母語のnative speakerか英語が日本語に近いレベルのバイリンガルの教室に預けてしまうことです。